仮想通貨CFD取引の税率解説①|USDT・USDC等ステーブルコインペアの課税ルール 

仮想通貨CFD取引の税率解説①|USDT・USDC等ステーブルコインペアの課税ルール 

仮想通貨CFD取引の税率解説①|USDT・USDC等ステーブルコインペアの課税ルール 

海外FXで仮想通貨CFD取引を始めたものの、「USDT建てやUSDC建ての取引にかかる税金をどう計算すればいいのか分からない」「確定申告でどう記入すればいいのか不安」そんな悩みを抱えていませんか?仮想通貨CFD取引は現物取引とは異なる税制が適用され、特にステーブルコイン建てペアの損益計算は複雑です。本記事では、海外FXブローカーErranteが、仮想通貨CFD取引の税制、USDT・USDC等ステーブルコイン建てペアの課税ルール、確定申告の具体的な手順、税務調査対策まで、実務的な視点で徹底解説します。正しい知識を身につけ、安心して取引を続けましょう。 

仮想通貨CFD取引の税制基礎知識 

仮想通貨CFD取引と現物取引では税制が大きく異なります。まずは基本的な課税ルールを正確に理解しましょう。海外FXでの仮想通貨CFD取引は「雑所得」として総合課税の対象となり、給与所得などと合算されて課税されます。この仕組みを理解することが、適切な税務処理の第一歩です。 

仮想通貨CFDと現物取引の税制上の違い 

仮想通貨の現物取引と海外FXでの仮想通貨CFD取引では、税制上の取り扱いが根本的に異なります。現物取引で得た利益は「雑所得」として総合課税の対象となる点では共通していますが、CFD取引は「証拠金取引」であり、実際の仮想通貨を保有しません。 
国税庁の見解では、仮想通貨の売買による所得は原則として雑所得に区分されます(国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和5年版)。CFD取引も同様に雑所得として扱われますが、現物取引との大きな違いは「損失の繰越控除」ができない点です。国内FXは申告分離課税で3年間の損失繰越が可能ですが、海外FXの仮想通貨CFDはこの適用外となります。 
また、他の雑所得との損益通算は可能ですが、給与所得などとの損益通算はできません。この違いを理解せずに取引を続けると、確定申告時に混乱する原因となります。 

 海外FX業者での仮想通貨CFD取引は「雑所得」に分類される理由 

海外FX業者で行う仮想通貨CFD取引が「雑所得」に分類される理由は、所得税法における所得区分の定義に基づきます。所得税法第35条では、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得を「雑所得」と定義しています。 
仮想通貨CFD取引は継続的な売買を目的とした投資活動であり、事業として行っている場合を除き、通常は雑所得に該当します。国税庁は2017年12月に「ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」を公表し、仮想通貨取引による所得を原則として雑所得とする見解を示しました。 
この方針は現在も継続しており、CFD取引も同様の扱いです。雑所得は総合課税の対象となり、給与所得などと合算して税率が決定されます。所得が増えるほど税率が高くなる累進課税方式のため、高額所得者ほど税負担が重くなる点に注意が必要です。 

 総合課税による税率シミュレーション(所得別の実効税率表) 

総合課税による雑所得の税率は、所得金額に応じて5%から45%の7段階に区分されます(所得税法第89条)。 
これに住民税10%が加算されるため、実効税率は15%から55%となります。具体的には、課税所得195万円以下:15%(所得税5%+住民税10%)、195万円超330万円以下:20%(所得税10%+住民税10%)、330万円超695万円以下:30%(所得税20%+住民税10%)、695万円超900万円以下:33%(所得税23%+住民税10%)、900万円超1,800万円以下:43%(所得税33%+住民税10%)、1,800万円超4,000万円以下:50%(所得税40%+住民税10%)、4,000万円超:55%(所得税45%+住民税10%)となります。 
例えば、給与所得が500万円、仮想通貨CFDの利益が200万円の場合、合計700万円が課税対象となり、税率33%が適用されます。利益200万円に対して約66万円が税金として徴収される計算です。この累進課税制度を理解せずに取引すると、想定外の税負担に直面するリスクがあります。 

国内FXとの税制比較—申告分離課税との違い 

海外FXの仮想通貨CFD取引と国内FX取引では、税制が大きく異なります。国内FX取引は「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税の対象となり、一律20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)の税率が適用されます(租税特別措置法第41条の14)。 
一方、海外FXは総合課税の雑所得として扱われ、前述の通り最高55%の税率が適用される可能性があります。さらに、国内FXでは損失が発生した場合、翌年以降3年間にわたって繰越控除が可能ですが、海外FXではこれが認められません。例えば、利益が500万円出た場合、国内FXなら約101万円の税金で済みますが、海外FXで他に所得がない場合でも約126万円、給与所得が高い場合は最大275万円の税金が発生します。 
ただし、海外FXは他の雑所得(仮想通貨取引、アフィリエイト収入など)との損益通算が可能という利点もあります。税制面では国内FXが有利ですが、取引条件やレバレッジなど総合的に判断する必要があります。 

ステーブルコイン(USDT・USDC)建て取引の課税ルール 

USDT、USDC、BUSDなどのステーブルコインは「価格が安定している」ことから税金計算が不要と誤解されがちですが、実際には日本円への換算が必須であり、為替差損益も課税対象となります。ステーブルコインの定義と特性を理解し、これらを基軸通貨とした取引における正確な税務処理方法を学びましょう。 

ステーブルコイン(USDT・USDC・BUSD)とは何か 

ステーブルコインとは、法定通貨や商品などの資産に価値を連動させることで、価格変動を抑えた仮想通貨です。代表的なものにTether社が発行するUSDT(テザー)、Circle社が発行するUSDC(USDコイン)、Binanceが発行していたBUSD(バイナンスUSD)があります。 
これらは1コイン=1米ドルの価値を維持するよう設計されており、発行元が同額の米ドル資産を準備金として保有することで価値を担保しています。USDTは時価総額で最大のステーブルコインであり、2024年時点で約900億ドル規模に達しています。 
USDCは米国の規制に準拠した透明性の高い運営で知られ、約300億ドルの時価総額を持ちます。これらは仮想通貨取引所での基軸通貨として広く使用され、ボラティリティの高いビットコインやイーサリアムなどと異なり、価格が安定しているため、利益確定時の一時的な避難先としても活用されます。 
ただし、「価格が安定している=課税されない」という誤解は禁物です。 

USDT建てペアの損益は「円換算」が必須—計算の基本ルール 

USDT建てペアで取引を行った場合でも、日本の税制では必ず「日本円換算」での損益計算が求められます。国税庁の見解では、外貨建て取引は取引発生時の為替レートで円換算する必要があります(所得税基本通達57の3-2)。 

例えば、1BTC=50,000USDTで購入し、55,000USDTで売却した場合、5,000USDTの利益が発生します。この時点での米ドル/円レートが1ドル=150円であれば、5,000ドル×150円=75万円が課税対象となります。さらに、USDTを日本円に換金する際の為替レート変動も損益に影響します。 

取引時に1ドル=150円、円転時に1ドル=145円に下落していれば、5,000ドル×145円=72.5万円となり、実質的には72.5万円の利益として計上されます。このように、USDT建て取引では「仮想通貨の価格変動による損益」と「為替変動による損益」の両方を考慮する必要があります。計算が複雑になるため、取引ごとに記録を残すことが重要です。 

USDTとUSDCで税務処理に違いはあるのか? 

結論から言えば、USDTとUSDCの間に税務処理上の違いはありません。どちらも米ドル建てのステーブルコインとして扱われ、日本円への換算方法も同一です。国税庁は仮想通貨の種類による課税上の区別を設けておらず、すべての仮想通貨取引を同じ原則で処理します。 
したがって、USDTで得た利益もUSDCで得た利益も、いずれも雑所得として総合課税の対象となります。ただし実務上、USDTとUSDCでは米ドルとの交換比率(ペッグ)がわずかに異なる場合があります。2023年3月のシリコンバレー銀行破綻時には、USDCが一時的に0.88ドルまで下落した事例があります。 
このような状況では、同じ「1ドルステーブルコイン」でも実質的な価値が異なるため、取引時の実際のレートを正確に記録することが重要です。税務署への説明時には、どのステーブルコインを使用したか、その時点での対ドルレート、対円レートを明示できるよう準備しておきましょう。 

USDT建てBTC/USDTペア取引の損益計算シミュレーション 

実際の取引を例に、USDT建てペアの損益計算を見ていきましょう。前提条件:2024年1月15日にBTC/USDTペアで1BTCを50,000USDTで購入、同年3月10日に55,000USDTで売却、1月15日の米ドル/円レート:1ドル=148円、3月10日の米ドル/円レート:1ドル=150円。計算手順は以下の通りです。 
①取引時の円換算購入額:50,000ドル×148円=740万円、売却額:55,000ドル×150円=825万円。 
②損益計算:825万円-740万円=85万円の利益。この85万円が課税対象の雑所得となります。 
もし同じ期間に他の雑所得(アフィリエイト収入10万円など)があれば、合算して95万円が雑所得として申告されます。さらに給与所得が500万円ある場合、総所得595万円に対して税率が適用されます。 
この例では課税所得が330万円超695万円以下の区分に該当するため、税率30%が適用され、約28.5万円の税金が発生します。取引履歴、各時点の為替レート、計算根拠を明確に記録し、確定申告時に説明できるよう準備しましょう。 

円転時の為替レートと損益計算の実務 

USDT建てで得た利益を日本円に換算する際、「どの時点のレートを使うべきか」は多くの方が迷うポイントです。取引発生時レート、決済時レート、円転時レートなど、適用すべきタイミングを明確にし、税務署に説明可能な計算方法を実務的に解説します。 

取引発生時・決済時・円転時—どのタイミングのレートを使うべきか 

為替レートの適用タイミングは、所得税基本通達57の3-2「外貨建取引の換算」に基づき判断します。基本原則は「取引発生時のレート」を使用することです。具体的には、仮想通貨CFDのポジションを建てた時点(エントリー時)と決済した時点(エグジット時)のそれぞれで、USDTを円換算します。 
例えば、1月1日にBTC/USDTをロング、1月15日に決済した場合、1月1日の米ドル/円レートでエントリー価格を円換算し、1月15日のレートで決済価格を円換算します。その差額が損益となります。さらに、USDTを日本円に換金(円転)する場合、円転時点のレートで再度換算します。もし決済後すぐに円転せず、USDTのまま保有していた期間があれば、その間の為替変動も損益に影響します。 
実務的には、取引プラットフォームが表示する約定レートと、同時刻のUSD/JPYレートを記録することが推奨されます。三菱UFJ銀行やみずほ銀行などの主要銀行が公表するTTMレート(仲値)を参照することで、税務署への説明も容易になります。 

(出典:国税庁「所得税基本通達57の3-2」) 

為替レートの取得方法と信頼できる参照元(国税庁推奨ソース) 

為替レートは信頼できる情報源から取得し、記録を保管することが重要です。国税庁が推奨する為替レートの参照先は、主要金融機関が公表する「対顧客電信売買相場の仲値」(TTM)です。具体的には、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行などが毎営業日午前10時頃に公表するレートが一般的に使用されます。 
これらの銀行の公式ウェブサイトでは、過去のレートも確認可能です。また、日本銀行が公表する「基準外国為替相場及び裁定外国為替相場」も信頼性の高いデータソースです。仮想通貨取引所での実際の取引レートを使用することも可能ですが、取引所によってレートが異なる場合があるため、継続して同一のソースを使用することが望ましいです。 
実務上は、取引日時とともにスクリーンショットを保存しておくか、Excelなどで取引日・取引内容・使用レート・参照元を記録したログを作成しましょう。税務調査時に「なぜこのレートを使用したか」を合理的に説明できる根拠があれば問題ありません。 

【ケーススタディ】複数回取引した場合の損益通算方法 

複数回の取引を行った場合、すべての取引の損益を合算して申告します。ケーススタディとして、2024年に3回の取引を行ったとします。 
取引①:1月10日、BTC/USDT購入50,000ドル(1ドル=148円)、1月20日売却52,000ドル(1ドル=149円)→購入額740万円、売却額774.8万円、利益34.8万円。 
取引②:3月5日、ETH/USDT購入10,000ドル(1ドル=150円)、3月15日売却9,500ドル(1ドル=151円)→購入額150万円、売却額143.45万円、損失6.55万円。 
取引③:6月1日、BTC/USDT購入60,000ドル(1ドル=152円)、6月10日売却65,000ドル(1ドル=153円)→購入額912万円、売却額994.5万円、利益82.5万円。年間の損益合計:34.8万円-6.55万円+82.5万円=110.75万円の利益。 
この110.75万円が雑所得として申告対象となります。損失が出た取引も必ず記録し、利益と相殺することで税負担を適正化できます。 
ただし、年をまたいだ損失の繰越はできないため、年内での損益通算のみ可能です。すべての取引履歴、使用した為替レート、計算過程を明確に記録しておきましょう。 

必要経費・損失繰越・確定申告の実践ガイド 

仮想通貨CFD取引では、どのような費用が必要経費として認められるのでしょうか?また損失が出た場合の繰越控除は可能なのか?確定申告書への具体的な記入方法とともに、実務で即活用できる情報を網羅的に解説します。 

必要経費として計上できる項目一覧(通信費・書籍代・セミナー費用) 

雑所得の計算では、収入を得るために直接要した費用を必要経費として差し引くことができます(所得税法第37条)。仮想通貨CFD取引で認められる主な必要経費は以下の通りです。 
①取引手数料・スプレッド:取引所やブローカーに支払った手数料は全額経費計上可能です。 
②通信費:インターネット回線費用、スマートフォンの通信費は、取引に使用した割合(按分)を経費とできます。例えば、1日8時間のうち2時間を取引に使用する場合、25%を経費計上できます。 
③書籍・情報商材費:FXや仮想通貨取引に関する書籍、有料メルマガ、オンラインサロン費用など。 
④セミナー・勉強会費用:取引手法を学ぶためのセミナー参加費や交通費。 
⑤PCやタブレット購入費:取引専用に使用する場合は減価償却費として計上可能(10万円未満は一括経費)。 
⑥取引ツール・ソフトウェア:チャート分析ソフト、自動売買ツールの購入費やサブスクリプション費用。 
⑦家賃・光熱費:自宅で取引する場合、使用面積や時間で按分した金額。ただし、私的利用との明確な区分が必要です。 
領収書やレシート、クレジットカード明細を保管し、事業関連性を説明できるようにしましょう。 

損失の繰越控除は不可—雑所得の特性と対策 

海外FXでの仮想通貨CFD取引による損失は、翌年以降への繰越控除ができません。これは雑所得の特性によるものです。国内FX(先物取引に係る雑所得等)は申告分離課税として扱われ、租税特別措置法第41条の15により3年間の損失繰越が認められていますが、総合課税の雑所得にはこの規定が適用されません。 
例えば、2024年に200万円の損失、2025年に300万円の利益が出た場合、2025年の300万円全額が課税対象となり、2024年の損失は相殺できません。これは大きなデメリットです。 
対策として、 
①同一年内での損益通算を最大化:他の雑所得(アフィリエイト、印税、講演料など)がある場合、それらと損益通算することで税負担を軽減できます。 
②利益確定のタイミング調整:大きな損失が出た年に、含み益のあるポジションを決済して利益を確定させ、同一年内で相殺する戦略も有効です。 
③法人化の検討:取引規模が大きい場合、法人を設立して事業所得として処理することで、損失の繰越や他の所得との損益通算が可能になります。 
ただし法人化には設立費用や維持コストがかかるため、税理士と相談して判断しましょう。 

確定申告書(第一表・第二表)への具体的な記入手順 

確定申告書への記入方法を具体的に解説します。使用する書類は「確定申告書第一表」「確定申告書第二表」です。【第一表の記入】①「収入金額等」欄:「雑所得(業務)」の「その他」欄に、仮想通貨CFD取引による総収入金額を記入します。例:年間売却額の合計が1,000万円の場合、「10,000,000円」と記入。②「所得金額等」欄:「雑所得」の欄に、収入金額から必要経費を差し引いた金額を記入します。例:収入1,000万円-必要経費50万円-取引による損失100万円=850万円を記入。③「税金の計算」欄:給与所得など他の所得と合算した総所得金額から、所得控除を差し引いた課税所得金額に税率を適用して税額を計算します。【第二表の記入】①「所得の内訳」欄:「所得の種類」に「雑所得(業務)」、「種目」に「仮想通貨CFD取引」、「所得の生ずる場所」に取引業者名(例:Errante)、「収入金額」と「所得金額」をそれぞれ記入します。②複数の業者を使用している場合は、それぞれ別行で記入します。記入後は計算ミスがないか確認し、添付書類(取引明細書、必要経費の領収書等)を準備しましょう。 

確定申告ソフト(freee・マネーフォワード)での入力方法 

確定申告ソフトを使用すると、複雑な計算や記入が自動化され、効率的に申告書を作成できます。代表的なソフトとして「freee会計」と「マネーフォワードクラウド確定申告」があります。【freee会計での入力方法】①ホーム画面から「確定申告」→「収支」を選択。②「収入」タブで「雑収入」を選択し、「仮想通貨CFD取引」などの取引内容を入力。③金額欄に総収入金額を入力(例:1,000万円)。④「支出」タブで必要経費を項目ごとに入力(通信費、書籍代など)。⑤「確定申告書類の作成」から自動計算された申告書を確認・出力。【マネーフォワードの入力方法】①「確定申告」→「仕訳帳入力」を選択。②「収入」で「雑所得」を選び、補助科目に「仮想通貨CFD」と入力。③金額と日付を入力し保存。④「経費」も同様に項目ごと入力。⑤「確定申告書」メニューで自動作成された申告書を確認。どちらのソフトも、銀行口座やクレジットカードを連携させることで、取引データの自動取り込みが可能です。ただし、仮想通貨取引所の明細は手動入力が必要な場合が多いため、Excelで取引ログを作成しておき、それを元に入力すると効率的です。 

(参考:freee公式サイト、マネーフォワード公式サイト) 

税務調査対策と節税の実践ポイント 

税務調査で指摘されやすいポイントを事前に把握し、適切な記録管理を行うことでリスクを最小化できます。合法的な節税対策と、やってはいけないNG行為の境界線を明確に理解し、安心して取引を続けるための実践的な知識を身につけましょう。 

税務調査で指摘されやすい5つのミスパターン 

税務調査で指摘されやすい典型的なミスを5つ紹介します。 
①申告漏れ・無申告:「海外の業者だから申告しなくていい」という誤解が最も危険です。税務署は金融機関との情報交換協定(CRS:Common Reporting Standard)により、海外口座の情報も把握しています。年間20万円超の利益がある場合(給与所得者)、必ず申告が必要です。 
②計算ミス・為替レートの誤適用:円換算時に誤ったレートを使用したり、計算過程が不明確なケースが指摘されます。使用したレートの根拠と計算式を明示できるよう記録しましょう。 
③必要経費の過大計上:私的費用を経費として計上するケースです。特に通信費や家賃は按分が必要であり、100%経費計上は認められません。事業関連性を合理的に説明できる範囲で計上しましょう。 
④損益通算の誤り:給与所得と雑所得の損失を相殺しようとするケースです。雑所得の損失は他の雑所得とのみ通算可能であり、給与所得との損益通算はできません。 
⑤取引記録・証拠書類の不備:取引明細や領収書を保管していないケースです。税務調査では、申告内容の根拠資料の提示が求められます。最低7年間(場合により5年間)の保管が義務付けられています。 

取引履歴と証拠書類の保管方法—何を何年間保存すべきか 

適切な記録保管は税務調査対策の基本です。保管すべき書類と期間は以下の通りです。 
【必須保管書類】 
①取引明細書:すべての仮想通貨CFD取引の約定記録(日時、通貨ペア、数量、価格、手数料)。取引プラットフォームからCSVやPDFで定期的にダウンロードしましょう。 
②入出金記録:ブローカーへの入金・出金履歴、銀行振込明細、クレジットカード明細。 
③為替レート参照記録:使用した為替レートの日付と参照元(銀行公表レート等)。 
④必要経費の領収書・レシート:通信費、書籍代、セミナー費用など。 
⑤損益計算書:年間の取引を集計した自作のExcelシートなど。 
⑥確定申告書の控え:税務署受付印のあるものまたは電子申告の受信通知。【保管期間】法人の場合は7年間、個人の場合は原則5年間(青色申告の場合は7年間)の保管が義務付けられています(国税通則法第70条)。 
ただし、無申告や過少申告の場合は7年間遡って調査される可能性があるため、個人でも7年間保管することを推奨します。 
【保管方法】 
紙の書類はファイリングし、デジタルデータは外付けHDDやクラウドストレージに複数バックアップを取りましょう。 

合法的な節税対策—法人化のメリット・デメリット 

取引規模が大きくなった場合、法人化による節税効果が期待できます。 
【法人化のメリット】 
①税率の優遇:法人税の実効税率は約30%(資本金1億円以下の中小法人の場合、所得800万円以下の部分は約23%)であり、個人の最高税率55%と比較して有利です。年間利益が500万円を超える場合、法人化による節税効果が大きくなります。 
②損失の繰越控除:法人の場合、最大10年間(令和6年4月1日以降開始事業年度)の損失繰越が可能です(法人税法第57条)。 
③経費の範囲拡大:役員報酬、退職金、社宅費用、生命保険料など、個人より広範な経費計上が可能です。 
④社会的信用の向上:法人名義での取引は信用力が高まります。 
【デメリット】 
①設立・維持コスト:法人設立に約20〜30万円、毎年の税理士費用が約30〜50万円かかります。 
②社会保険料の負担:役員報酬に対して厚生年金・健康保険の事業主負担が発生します。 
③事務負担の増加:帳簿作成、決算書作成、法人税申告など、個人より複雑な事務作業が必要です。 
④赤字でも法人住民税:赤字でも年間約7万円の均等割が発生します。目安として、年間利益が安定して500万円を超える場合は法人化を検討する価値があります。税理士に相談し、シミュレーションを行いましょう。 

税理士に相談すべきタイミングと準備すべき書類チェックリスト 

税理士への相談が推奨されるタイミングは以下の通りです。 
①年間利益が500万円を超えた場合:税負担が大きくなるため、節税対策の検討が必要です。 
②複数の所得がある場合:給与所得、事業所得、雑所得など、複数の所得区分がある場合、適切な損益通算や税額計算が複雑になります。 
③過去に申告漏れがあった場合:自主的に修正申告することで、加算税や延滞税を軽減できます。 
④税務調査の通知を受けた場合:速やかに税理士に依頼し、適切な対応を取りましょう。 
⑤法人化を検討する場合:設立手続きや税務メリットのシミュレーションが必要です。【相談時に準備すべき書類チェックリスト】 
□過去3年分の確定申告書控え 
□すべての取引明細書(CSV・PDFデータ) 
□入出金記録 
□使用した為替レートの記録 
□必要経費の領収書・レシート 
□源泉徴収票(給与所得がある場合) 
□他の所得の資料(不動産所得、事業所得など) 
□マイナンバーカード 
□銀行口座情報 
□質問事項をまとめたメモ 
税理士費用は年間10〜30万円が相場ですが、適切なアドバイスにより節税効果がそれを上回る場合が多いです。 

まとめ 

海外FXでの仮想通貨CFD取引、特にUSDT・USDC建てペアの税金は「雑所得」として総合課税の対象となり、最高55%の税率が適用されます。ステーブルコインでも日本円への換算が必須であり、為替差損益も課税対象です。正確な損益計算のために、すべての取引記録、使用した為替レート、計算過程を明確に保管しましょう。必要経費の適切な計上、確定申告書への正確な記入、そして税務調査に備えた証拠書類の保管が重要です。年間利益が500万円を超える場合は、法人化による節税効果も検討に値します。Erranteでは、トレーダーの皆様が安心して取引できるよう、最新の税務情報を随時発信しています。不明点があれば専門の税理士にご相談いただくとともに、当メディアを定期的にチェックし、正しい知識で資産形成を進めていきましょう。